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日常

とある朝、男は最寄り駅のプラットホームに立ちそこで見た光景におもむろに
「はぁ~っ」
というため息をつきあからさまにうんざりとした表情をした
それもそのはず、列車の乗降ゲートの前はどこも黒山の人だかりができているのである。
「どんなにうまいラーメンでも並んでまでは食べたくない」などと言っているような人でさえ見事
その行列に並んでいるのである。一体、何故(なにゆえ)この電車という乗り物はこれほどの人気がある
のだろうか、ラーメンは食べたいと思う人が並んでいるのだろうが、ここに並んでいる人達は必ずしも
この電車に乗りたいと思っている人達ばかりではないだろう。むしろ、できることならば乗りたくないと思っている人達のほうが多いのではないか、ならば何故こんなにも混雑をするのか、それはここに並んでいる人達にはこの電車乗らざるを得ない理由があるからなのだ。細かな理由は人さまざまかもしれませんが、大元の理由を辿れば生きるためということに繋がるのだろう。そして、日本の電車は余程のことがない限り定刻通りに運行されるため、正確かつ最短で目的地に辿り着ける交通機関なのである。しかも、何らか理由で遅延してしまった場合には遅延証明まで出してくれるというのだから、乗らざるを得ない理由が生きるためということであるのならば、人気があるのも頷けるというものである。そんなことを考えているところに列車が来た。列車の乗降扉とホームの乗降ゲートがピタリと重なる様はいつ見ても鮮やかである。扉とゲートが同時に開き降車客の有無を確認した後行列を成していた人達が一斉に車内へとなだれ込むのである。その様子はまるでおしくらまんじゅうのようである。そんな人込みにもみくしゃにされながらなんとか車内に乗り込んだ男はふと思った。
「なぜ、おしくらまんじゅうなのだろう。この状態でまんじゅうでは中のあんこが飛び出てくしゃくしゃになってしまうのではないか。でもあれか、あんこが入っているものばかりがまんじゅうではないのかもしれないな」
こんな状況でよくそんなことを考えられるものである。車内に乗り込むのも一苦労だが、乗り込んでからも試練は続くのである。男はこの状況の中で出来るだけ女性の近くは避け、両手を挙げて吊り革を掴むのである。それは痴漢にでも間違われたのではたまったものではないからだ。だが、両手を挙げ無防備になっているためスリなどにも警戒しなければならず、片時も気が抜けないのである。そんな時、男はいつも思うのである。痴漢に間違われるのは困るがなぜ自分がこんな努力をしなければならないのか、女性が痴漢に合わない努力をするべきではないか、いや、それも違うな。こういう考え方が男女差別につながってしまうのかもしれない。この考え方は間違っているな。そもそも、なんで痴漢や盗撮などを行なう輩いるのだ。そんなごく一部の輩のせいで自分がこんな努力をしなければならないなど理不尽極まりない。こういうことを慣用句では「漁夫の利」や「風が吹けば桶屋が儲かる」というのだろうか。全く因果関係がないことで影響を受けるにしても、漁夫や桶屋のように儲かるのならばまだ良いだろう。しかし自分は、男は心の中で叫んだ。
「俺は多大な迷惑を被っているのだ。冗談じゃない」
と、いらぬことを考えて自ら腹を立てているのだから、そんな奴が儲かろうはずがなかろうというものである。そうこうしているうちに男の降車駅が間近に迫ってきた時、男はどこか得意げな顔をした。男はいくつかの駅をやり過ごす間に車内の中央近くまで追いやられていた。通勤ラッシュの混雑の中でその位置から降車するのは至難の業である。だが、男は特に慌てる様子もなく列車が駅に着くのを待っていた。いざ列車が駅に着き、扉が開いたところで男は動き出した。扉が開いたことですし詰めだった車内に人の流れが出来た。そこに生じたわずかな隙間を縫うようにスルスルとすり抜ける様はあたかも忍者さながらである。とは言い過ぎかもしれないが見事な体裁きである。先ほどの男の得意げな顔は年齢の割には軽快なこの動きに自信があったからなのだ。とはいえ、男が見せたような動きを数多くの人がしているところを見ると男が特別というわけではないらしい。毎日のことであるから自然と身についたのだろう。というよりも、人の流れが自然とそうなるのかもしれない。そんなことで得意げになれるのだから、やはり安い男である。列車を降りると男は出口へと速足で向かった。そうはいっても人込みに遮られなかなか前に進めない。男はエスカレーターは使わずに階段を駆け上った。上りは駆けることができても、下りは足がもつれてしまうため駆け降りることはできない。そんなところに男の年齢が感じられるのである。それでも他の乗客よりの早く改札に辿り着いた男がICカードをタッチして改札を抜けようとしたとき、大きな警告音とともに改札のゲートが閉じた。速足で歩き様にカードをタッチして改札を抜けようとしたところにゲートが閉じたため、その勢い余って前のめりに倒れそうになってしまった。男は体勢を立て直し、あたかも何もなかったかのように券売機に向かった。エスカレーターを使わずに階段を駆け上った努力がまたしても無駄になってしまったのだ。そして男は、また心の中で叫んだ。
「なんて日だ。一体、俺が何をしたというのだ」
何をしたというよりは、ICカードのチャージをし忘れたのである。自業自得なのである。納得がいかないという顔をしながらチャージを済ませ、改札を抜けた。駅から少し離れたところまで歩いて男は立ち止まり、
「ふーっ」
と、一度深呼吸をした。男は顔を上げて前を向き再び歩きだして呟いた。
「よし、大丈夫だ。俺にはまだやることがある。まだまだこれからだ」
当たり前である。まだ出社前なのだから。
といったところで、どうやらお時間が参った模様でございます。この続きは次回ということで、今回はこのあたりで失礼させていただきます。
次回、衝撃の展開が! 乞うご期待!

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